*この記事はイトグチに2023年7月17日に投稿したものです。
秋田での豪雨のニュースが流れている。つい先日、秋田で素晴らしい経験をさせてもらったばかりなので心配している。今回の豪雨によって被災された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧復興をお祈りしたい。
今回は多くの人に訪れてほしい秋田、そしてナマハゲの話。
秋田、男鹿半島へ行く
秋田へ学生時代の友達に会いに行ってきた。「遊びに行くね」と言ったきり、機会もないままにコロナ禍に突入し、そのままになってしまっていた。ひょんなことから連絡を取ったのをきっかけに「行く行く詐欺になってるから、来月行くわ!」と急に話がまとまった。共通の友達にもダメ元で声をかけたら、彼女も来られるという。こういうのってきっかけと勢いとタイミングだなと思う。
そんなこんなで朝5時起きで空港へ向かい、飛行機に乗り、9時前には秋田空港に友達と2人で降り立った。今回は1泊2日。秋田の友達が家族で最近ハマっているという男鹿半島を中心に案内してくれるという。男鹿半島といえばナマハゲ。大きいナマハゲ像があるようだからその写真を撮りたい、その程度の軽い気持ちだった。
初めてのナマハゲ
ナマハゲ=包丁を持った鬼が子どもを追いかけ回すイメージしかなかった。しかしナマハゲは悪さをする鬼ではなく神様。そして話もできるのだ!
ナマハゲ問答と呼ばれるそれを男鹿真山伝承館で体験できる。
ナマハゲ問答とは、ナマハゲとそれを迎える家の主人(親方と呼ばれる)のやり取りだ。
ナマハゲは大晦日にやってくる。悪い子どもはいないか家中を探しまわるナマハゲを、親方は料理と酒でもてなす。
ナマハゲは今年一年がどんな年であったか、元気にしていたか聞く。親方が自分の子どもや嫁を褒めると、ナマハゲは「本当にそうか?怠けてないか?」と疑う。親方が「うちの子にはこんなにいい所があるんです」と説明すると、ナマハゲも納得して「そうか、そうか、自分は山から見ているぞ。また来年も来るからそれまでみんな元気に励めよ」と山へ帰っていくのだ。
私は冒頭から涙が出ていた。怖かったからではない。
元気であったか聞くナマハゲ。子どもを褒める親方。疑われても更に子どもを褒める親方。それを信じ、見守るナマハゲ。
問答が終わっても感動の余韻で涙が止まらない私を友達2人は心配してくれたが、私の心は満たされていた。
自分の勤める会社の期初会議と重なり、あまりの違い、そしてナマハゲ・親方それぞれのやさしさに泣けてきたのだ。期初会議では前期の結果と今期の目標を個別に発表するが、ここでは事業部長、営業部長から罵声と怒号が飛び、吊し上げが行われる。どんなに前期の結果が良かったとしても、重箱の隅を突くやり方で結局追い詰められる。直属の上司は部下を褒めるどころか守ることなく気配を消す。今の職場に足りないのはこのナマハゲ問答だ。私にも社内で管理職的な仕事が回ってくるようになった。ナマハゲ問答を心に持ちながら仕事をしようと、自分に誓った。

守られているということ
続いて隣のなまはげ館に入る。ナマハゲの虜になっている私は張り切って乗り込んだ。秋田の友達は実際子どもの頃にナマハゲを経験しており「トラウマレベルで怖かった」と話してくれた。資料館では貴重な過去の映像が観られるホールもある。逃げ回ったり柱にしがみついて連れて行かれまいと泣き叫ぶ子どもたちの姿は、外国人の観光客に大ウケであった。しかし私には、子ども以上におじいちゃんやおばあちゃんの存在が印象に残った。映像には、子どもを自分の陰に隠そうとしたり、しっかりと肩を抱いて子どもを守るおじいちゃん、おばあちゃんも映っているのだ。怖いものから自分を守ってくれる存在が身近にいると知る、これは子どもにとても大切な経験なのではないか。友達に聞くと「確かに自分も、おばあちゃんが一緒に隠れてくれた」と話してくれた。ナマハゲも、問答する親方も、祖父母も、それぞれが一貫して「見守る」立場なのだ。
子どもの頃、親に甘えることができなかった私は、自分のことは自分で守らなければいけないという気持ちが強い。防災に興味を持つようになったのも「自助」の大切さを知ったからだ。離婚をしてその覚悟はより顕著となった。今までもちろん沢山の人たちに助けてもらいながら生きてきた。しかし困ったときに「助けられる」のと、いつも何かに「守られている」では根本的に違う。私は今まで「何かに絶対的に守られている安心感」に飢えてきたからこそ、ナマハゲに感動し憧れるのかもしれないな、と気がついた。これからの人生、私が誰かに守られていると感じる機会はあるのだろうか。少なくとも、自分以外の誰かを守ることはしていきたいと思う。「また来るからね」そんなナマハゲ的存在になりたい。
なまはげ館を出ると、ババヘラアイスが売られていた。おばあちゃんが綺麗に盛ってくれるこのアイスは、アイスクリームとシャーベットの間のような味と食感でとても美味しい。私は2日間にババヘラアイスを3回食べた。子どもだったらお腹を心配し守る立場の親から怒られているだろう。自分で自分を守っているからこそ自分の責任で、時にリスクも冒せるのだ。大人は最高だ。

今回の旅の軌跡
- なまはげ館/男鹿真山伝承館:多くの人にナマハゲの素晴らしさを知ってもらいたい!!
- 道の駅おが:ババヘラアイススポット。施設併設のジェラート屋もある。
- 海鮮屋:お昼ご飯はここ!秋田の海の幸が楽しめる。
- 元湯雄山閣:こちらで一風呂。ここにもナマハゲ!
- 里山のカフェににぎ:宿泊はこちらの民宿。お食事も美味しくて、居心地も良くて最高のひとときだった。NHK新日本風土記の録画を見せてもらい、また泣いた。
- 雲昌寺:あじさいを見に夜間ライトアップ特別観覧へ。蛍もいた!
- 稲庭うどん 無限堂:2日目のお昼ご飯。秋田を代表する名産品、稲庭うどん。お店の雰囲気も素敵。
次に訪れる時には、五風なまはげ太鼓 を見たい!!そして「ナマハゲ伝導士」になりたい!
今回の豪雨で被災された場所もあるようで心配だ。どうぞこれ以上、被害が大きくなりませんように。

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